先ほどの放送をもって、古館伊知郎キャスターが、報道ステーションを降板。「死んでまた再生します。皆さん、本当にありがとうございました」で締めくくられた最後のあいさつ。ていねいで、真摯で、時に冗談交じりのような口調で、古館キャスターらしかったと思う。
古館伊知郎は言葉のマジシャンである。小学校のころから観ていた『新日本プロレス中継』は、古館&山本小鉄コンビの実況と解説なしには成立しなかった。
「落日の闘魂は見たくない」。猪木に対し、そう言い放った古館伊知郎は、自らが落日の闘魂であるかのように、死に、そして、猪木のように、再生するだろう。
軽い言葉で答弁を繰り返すこの国の首相について語るとき、古館伊知郎は、より一層ていねいに表現し、決して直接的でなくても、観る者に、事の真相と切実さを伝え続けた。稀に見るこの才能を、私たちは埋もれさせてはならない。古館伊知郎を再生させるためには、彼自とともに、猪木信者よろしく私たち視聴者がいなくてはいけないのだ。