2024/05/29

誇りと逡巡、矛盾が交差する『RICHLAND』


 『RICHLAND』の試写会へ。リッチランドは、マンハッタン計画の核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」のベッドタウン。長崎に投下された「ファットボーイ」のプルトニウムは、ハンフォード・サイトで製造された。
 この町には、原爆が第二次世界大戦を終結させ、その後も核抑止が世界の秩序を守っていると、誇り高く思う住民が多い。
 地元高校フットボールチーム「ボマーズ」のシンボルは「キノコ雲」と「B29」だが、今の時代にそれはどうかと話し合う若者も。
 また、地元の川で捕れた魚は食べないという住民や、プラントで働いていた父親は放射能の影響で死んだと言う女性もいる。
 誇りと逡巡、矛盾が交差するが、戦争加害国に生きる自分にとって視座に飛んだ作品だった。

2024/05/28

主人公アビーと蓮舫がシンクロする『Batiment 5』


 『Batiment 5』。ジャン・バルジャンじゃない方の『レ・ミゼラブル』のラジ・リ監督最新作。パリ郊外、労働者階級の移民が住む地区で進む団地の解体と再開発。強引に計画を進める市長に抗う主人公アビーは、市長選挙に立候補することを決意。だが、ある事件をきっかけに、市長は頑なな強行姿勢を貫こうとし、市民の反発の声も高まっていく。
 昨日、蓮舫が都知事選に出馬するとのニュース。今日の出馬表明を見た後だったからだろうか、アビーと蓮舫がシンクロする。都知事選の前に見ておきたい作品かと。

いろんな人の寂しさこもる『シド・バレット 独りぼっちの狂気』


 『シド・バレット 独りぼっちの狂気』。言わずとしれた初期ピンク・フロイドのメンバーであり中心人物。ピンク・フロイドを聞き始めた中学のころには、すでに隠遁生活に入っていたし、何と言ってもカリスマ化されていた。
 当時は、奇抜だとも思わず音源に親しんできたが、今聴くと、かなりトリッキー。特に、ライブはすごいね。彼の人生については、ぼやっとしか知らず。いろんな人の寂しさがこもっていたが、「独りぼっち」ではなかったように感じた。

2024/05/25

パンドラの箱を開けてしまった『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』

 早稲田大学キャンパスで一人の若者が殺された内ゲバの真相に迫る『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』。革命という大義名分の下、正当化される暴力は、狂気。自衛といい暴力装置を拡大する現政権を見るようであり、現代日本を考えるための重要作。
 上映後トークは、代島治彦監督、劇パート演出の鴻上尚史さん、望月歩さん、琴和さん、峰岸航生さん、香川修平さん、半田貴大さん。
 「内ゲバで死んだ人は忘れ去られていく。パンドラの箱を開けたのだがら、伝えたい」と、鴻上さん。


終始不穏『関心領域』

 『関心領域』。鮮やかな色合いでドイツ人家族の生活を描き、塀の向こうのアウシュビッツは音と煙で表現。終始不穏。
 そして、これは、過去の話ではない。私たちの塀の向こうには、ガザがありミャンマーがある。

2024/05/22

もっと寛容でありたかった。『ありふれた教室』


 『ありふれた教室』。「不寛容主義」をうたう学校で、新任教師が、教室の秩序をただそうと、正義感とちょっとした好奇心から起こした行動が招く悲劇のループ。実際にも、会社でもありそうな話。怖くもあるが、私は、ラストで救われた。

2024/05/21

HARD-ONS、結成40周年だって


 はみ出し者映画の特集イベント「サム・フリークス」を主宰する岡さんのブログを見ていたら、HARD-ONSの結成40周年ジャパンツアー初日イベントがあるとのこと。場所は、渋谷パルコにあるSUPER DOMMUNE。
 ホワイトシネクイントで『パスト・ライブス』を見る予定だったので、これはちょうどいいと、今朝Peatixでチケットを購入。ドリンク代別で2000円よ、しかも整理番号19番って、どういうことよ?な訳だが、ま、私もノーマークだったしね。
 で、トークからのライブ。レッチリも良かったみたいだけど、こちらも素晴らしい時間を過ごせた。

「再会」は余計。とにかく切ない『パスト ライブス/再会』


 『パスト ライブス/再会』。宣伝では、ものすごいラブストーリー感を煽っているが、とにかく切ない。こういう作品を出してくるとは、さすがA24だが、邦題の「再会」は、余計。確かに再会なのだが、原題直訳の「前世」を大事にしてほしかった。

2024/05/18

米軍による機銃掃射の跡


 山内若菜さんの作品に、米軍による機銃掃射の跡が残るJR鶴見線の国分駅を描いたものがあり、せっかく鶴見まで来ているのでと、初めての鶴見線に乗り込み、一駅、国分駅へ。
 戦前からの建物の壁には、銃弾の跡。ぞわっとするし、この駅、かなりな雰囲気で、タイムスリップしたようでもあった。

『山内 若菜 予感展 ー神々の草原・讃歌 樹木からー』

 『山内 若菜 予感展 ー神々の草原・讃歌 樹木からー』を見に、横浜鶴見へ。
 山内さんとは、2016年にインタビューをして以来、SNSを通じて連絡を取り合ってはいたのだが、山内さんが、今年公開された三上智恵監督『戦雲』の書籍版の表紙や映画中での紙芝居を描かれていたこと、そして3月にNTT労組組合員の子供たちが広島で彼女の作品に触れ、また直接話を聞いたことなどが重なり、個展に言って直接お礼も言いたくてね。
 今回は、広島の被爆樹木を描いた作品をはじめ大作三作品を中心とした展示。それらの全体像を見て近づいて、そして離れて。他の作品とも行き来して。福島、広島、新潟、鶴見が、距離や時間を超えつながっていく。そして自分自身が、一つの生物として作品の中に存在しているような感覚に。6月末からは赤羽で展覧会を行うそう。また、お邪魔します。

前日譚が見てみたい『貴公子』


 冒頭で気付かなかったシーンがあったのではと思い、『貴公子』2回目。確かに、そうだった。なるほどね。
 スピード感もあるし、流れも抜群で、いい作品。次回作はないかなと思っていたが、前日譚は見てみたいし、もしかしたら〜次もあるかもね。ま、その前に、『魔女』の最新作が早く見たいのだけど。
 ところで、文句なしのように言っているのだが、字幕がよくない。ハングルは分からないが、日本語として、そんな言葉、今どき使わないだろうという表現がいくつか。どこかで英訳バージョン見られないかな。

2024/05/15

ノーCGのパペットが暴れまくる『キラー・ナマケモノ』


 『キラー・ナマケモノ』。直前に見た『胸騒ぎ』の後味の悪さを忘れるほどのバカバカしさ。ノーCGで、パペットが次々と悪行を働く姿は潔くさえ見える。
 無理矢理にシスターフッド感を醸し出し、強引な動物愛護のメッセージで締めるあたりも、かなり好き。もう一度見ても、いいな。
 ちなみに、原題は、『Slotherhouse』。エンドロールでは、「生獣の館」と訳していたが、「ナマ・ケモノ」らしい。悪乗りが過ぎる。

後味が悪すぎるし、伏線を回収できずの『胸騒ぎ』

 すでにブラム・ハウスによるリメイクも決まっている『胸騒ぎ』。『ミッドサマー』や『Lamb』と並び称されている北欧ホラーで、後味が悪いとは聞いていたのだが、悪過ぎるし、まったく伏線を回収できていない。これは、いかん。お勧めしません。また見るかもだけど。

2024/05/14

LIGHTERS、バンド感が増してたよ


 「LIGHTERS digital single release tour 2024 Tokyo final」@新代田FEVER。ゲストのHOMECOMINGSも素晴らしいし、LIGHTERS、バンド感が増して、とても良かった。rumi作のZINEも、いかしてる。
 で、LIGHTERSとHOMECOMINGS、Laura Day Romanceのスリーマンが見たいな~って思っていたら、HOMECOMINGSの名古屋公演ゲストが、Laura Day Romanceだと。悩ましい。

2024/05/11

『猿の惑星』らしいシリーズ新作『猿の惑星/キングダム』


 チャールストン・ヘストン主演作(テレビだけど)以来、見ている『猿の惑星』。シリーズ新作『猿の惑星/キングダムを見に、調布のイオンシネマのIMAXシアターへ。空いてて、いいね。
 で、『猿の惑星』らしいというか、人間ってダメねは作品。

2024/05/09

『魔女』のテイストはありつつ、まったくの別物。パク・フンジョン監督最新作『貴公子』


 『THE WITCH/魔女』のパク・フンジョン監督最新作『貴公子』。銃撃などアクションシーンが派手なのは、折り込み済みだが、カーアクションが凄かったし、何より読めない展開がたまらん。
 キャストや音楽など、『魔女』のテイストはありつつ、まったくの別物。ちょっとしたバディムービーでもある。案外に続編があったりして~と思いつつ、『魔女』の最新作を待つ。

大衆演劇と地下アイドル。『瞼の転校生』


 『瞼の転校生』。大衆演劇一座に生まれ、公演に合わせて毎月転校する中学生が主人公。一月しかいない学校だから友人を作ろうとしない彼と、不登校だが成績はピカイチの同級生、そして彼の元カノは大衆演劇にハマっていき、劇団のタニマチの娘は元地下アイドルで大衆演劇で再起を期すって、すごい設定。笑えて泣けて、もっと早く来れば良かったよ。
 そして大衆演劇を、一度きちんと見てみたい、と思う。

2024/05/08

中華民国時代の上海を舞台に繰り広げられるスパイ・ノワール『無名』


 トニー・レオン主演、ワン・イーポー共演の『無名』。中国共産党、国民党、日本軍のスパイの心理戦を描いた、スパイ・ノワール。中華民国時代の上海を舞台に、緊張感のあるドラマが展開される。過去と現在が交差する複雑な脚本で、見ている私は騙されっぱなし。トニー・レオンとワン・イーポーのアクションシーンもかなり見もの。
 ただ、史実がベースなので、1930年代~終戦までの政治家や軍人の名前がちょいちょい登場するので、ちょっとばかし知識があった方が、より楽しめるかも。

2024/05/05

ミャンマーの夜明けを願うだけではなくて、行動を。『夜明けへの道』

 『夜明けへの道』。ミャンマー軍のクーデターによる圧政に抗い、潜伏しながらセルフ・ドキュメンタリーを制作するコ・パウ監督。暗い夜道に光は見えないが、火を灯すのは、私たちでもあると自戒。
 上映後のトークで、Yangonかるたプロジェクト代表の野中優那さんが語った、道の先に、今抗っている若者らは存在するのかとの問いを噛みしめる。

2024/05/04

あっち側とこっち側の境界線を巡る考察。『水深ゼロメートルから』


 『水深ゼロメートルから』。学生時代、あっち側とこっち側の境界線って、あからさまにあって、それは大人も同じで、だから、こっち側にいて、もがく。そんな四人が、カッコいいのよ。
 上映後には、濵尾咲綺さん、仲吉玲亜さん、清田みくりさん、花岡すみれさん、山下敦弘監督による舞台あいさつ。撮影秘話を聞き、家に帰ってからパンフをじっくりと読んで、なるほどと。また見に行く。

2024/05/02

今年二回目のFREEDOMS。入ってねーけど、最高に楽しい。


 『 We love FREEDOMS! We are FREEDOMS! 2024 』@後楽園ホール。今年二回目のFREEDOMS、京子さんは今年初めて。入ってねーけど、最高に楽しいのよ。
 次回、後楽園は、『 葛西純プロデュース興行 東京デスマッチカーニバル2024 vol.1 』。行くしかない。

『毒娘』の前日譚「ちーちゃん」


 『毒娘』の前日譚、押見修造「ちーちゃん」。どうしても読みたくて、昼休みに書店へ。こちらには、どうしようもない親や男子同級生が登場。なるほどねな展開だったが、この作品以前の物語と、『毒娘』までの間のちーちゃんのことが知りたくなる作り。あれこれと、考えてしまう。

2024/05/01

滑稽だが、日常のあれやこれやが詰まった、良作。『走れない人の走り方』


 『凪の憂鬱』主演の辻凪子さんが、SNSでべた褒めしていた、台湾出身の蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督作品『走れない人の走り方』。
 主人公は、「ちょっと考えてもいいですか」と、判断を求められても決められない映画監督、キリコ。念願のロード・ムービー作りのため、四苦八苦し、周りは振り回されていく。
 滑稽だが、日常のあれやこれやが詰まった、良作。キリコが、父親が作った焼きそばを、目をきらきらさせながら食べるシーンが好き。

こういう奴いるわーな家父長制夫など、毒親が登場。『毒娘』


  以前から、ヒューマントラストシネマ渋谷で「ちーちゃん」の来ているジャージなどが展示され、気になっていた『毒娘』。
 ホラー的なビジュアルだけど、SNSで流れてくる情報では、シスターフッドだの社会派だのと違う趣きらしいとも。間もなく上映終了かもということで、見に来たのだが、ホラーです。間違いなしのホラーです。
 ただ、毒娘というより、こういう奴いるわーな家父長制夫など、毒親が登場。シスターフッドであり、ネグレトなどの社会問題をエンタメに昇華させた作品だった。
 ちーちゃんのバックグラウンドが分かりづらくはあるのだが、前日譚のコミック「ちーちゃん」が発売されているとのこと。買わねば。