『長崎の郵便配達』。元軍人で作家のイギリス人ピーター・タウンゼントと長崎の被爆者・谷口稜曄さんの交流を軸に、被爆の実相を現代へと伝えつないでいこうとする娘イザベルの姿を追ったドキュメンタリー。谷口さんには、2009年に、2時間以上のインタビューをしたことがある。また、2010年ニューヨークで行なわれたNPT再検討会議時にも少しだけお話をさせていただいた。とても口数は少ないのだが、あの重たき鋭い谷口さんの言葉が思い出される。
「私はね、プルトニウムの威力を証明するために生まれたモルモットでもなければ、見世物でもないんですよ。でも、皆さんが私の姿を見てしまったからには、私の歴史を知ってしまったからには、どうか私から目をそらさないでください。
私は、この世から核兵器がなくなるのを見届ける限り、安心して死ぬことはできないのです。長崎の原爆について、人間生きていくために必ず知らなければいけない。避けてはいけないんだということを知ってもらいたい。
長崎を最後の被爆地とするために、そして、私を最後の被爆者とするために、核兵器廃絶の声を世界の皆に届けてください。」
ちなみにピーター・タウンゼントの著書は『THE POSTMAN OF NAGASAKI』。一方、映画のタイトルは、『THE POSTMAN FROM NAGASAKI』。見終えてから、この違いに、合点がいった。