在日朝鮮人の夫と共に、北朝鮮に渡った日本人の姉と58年の時を経ての再会とその後を追う、ドキュメンタリー『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』。映画『血と骨』でも、作品の中心をなしていた日朝両政府によって進められた帰国事業は、50代の私でもおぼろげな記憶しかないので、すでに埋もれてしまった事実だと言ってもいいのかもしれないが、作品は、日朝両政府それぞれの思惑、そして、日本では、当時の自民、社会、共産、当時の左派系労働組合ナショナルセンター総評、朝鮮総連など、保革様々な団体の利害が一致し実行された政策だったと検証する。
その事実が認識されないままに、拉致問題、安全保障、日朝関係は複雑になり、国家に翻弄され、肉親と再会できない人たち、再会を拒む人たち。昔の話、自己責任で片付けてはいけない。時代、国家と、個人を問う重要作。ぜひに。